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【スペイン図書館】オビエドにある公共の中央図書館

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 今日は、気ままに、アストゥリアス州アストゥリアス県県都オビエド(Oviedo)にある、公共の中央図書館(Biblioteca de Asturias / Biblioteca Pública del Estado en Oviedo - Ramón Pérez de Ayala)にやってきました。オビエドは、中世にイベリア半島イスラム教の勢力が侵入した際、最後まで、征服されずに残った数少ない都市の1つです。いわば、スペインの最後の砦。その意味では、スペインの中のスペインと言っても過言ではないかもしれません。豊かな自然に恵まれたアストゥリアス地方にあって、落ち着いていて、趣深い街です。シードル(Sidra、リンゴ酒)が名産で、とても美味しいです。わたしの大好きな街の1つです。

 さて、このような街にある図書館はどんな図書館なのでしょうか。主な統計値を書きます

  • 【主な統計値(2019年)】
    建物内図書館利用エリア:4,281㎡
    入館者数:467,453人
    登録者数:68,049人
    所蔵資料総数:523,431件
    貸出総件数:113,101件
    (出典:スペイン文化・スポーツ省のページ

 この図書館の歴史は、1942年に、女性会館に設置されたところから始まります。その頃の蔵書は1,727冊と少なかったことに加え、街中から離れていたため、オビエドの中心地に公共図書館がない状態が続きました。
 1944年から、公共図書館をつくる動きが本格化し、1947年、最初の公共図書館が誕生することになります。その図書館は、フライ・ヘロニモ・フェイホー図書館と言いました。フェイホー(Jerónimo Feijoo、1676-1764)は、百科全書的な啓発書を書いた、ベネディクト派の修道士なのだそうです。図書館は、彼が住んでいた修道院の隣りにあったそうです。この時の蔵書は5,000冊 、読書机は70個、開館時間は17:30から21:30まで。開館時間が遅めであるのは、働く人すべてが、仕事のあとに利用できるようにするためでした。スペース不足が問題となり、1958年、移転するとともに県立図書館になりました。しかし、この場所も手狭になり、1987年、現在の場所に移り、名称も改め、今日に至っています。
 建物の歴史もおもしろかたったので、ご紹介します。現在の建物は、もとは16世紀後半に建てられた演劇場だったそうです。カサ・デ・コメディアス(Casa de Comedias)、または、テアトロ・デル・フォンタン(Teatro del Fontán)という名前だったとのことです。1901年、他の土地に、新しい劇場が建つことが決まり、この劇場は取り壊されることになりました。その際、正面玄関の装飾のみ残されました。現在の図書館は、1987年から、かつて劇場のあった場所に建ち、残された正面玄関の装飾を含め、建物の利用できる部分は再利用しているそうです。
 図書館のホームページを見ていて、興味を持ったのは、「図書館の宝石(Joyas de la Bibioteca)」という特集ページです。「宝石」として、次のようなものが紹介されています。

  • 1635年に刊行されたとされる聖地コバドンガ洞窟についての案内本
  • 16世紀後半に印刷されたアストゥリアス地方沿岸周辺の航海地図
  • レオポルド・アラス “クラリン”(Leopoldo Alas “Clarín”)の代表作『裁判官婦人(La Regenta)』の手書き原稿
  • 1538年に刊行された植物図鑑
  • ラモン・ペレス・デ・アヤラ(Ramón Pérez de Ayala)の『虎のフアン(Tigre Juan)』とその第2章『名誉の汚れを癒すもぐり医者(El cuaderno de su honra)』*1の手書き原稿
  • 16世紀後半から17世紀前半に刊行されたとされるアストゥリアス地方の歴史についての初版本

 これらの中で、特に興味を持ったのは、レオポルド・アラス “クラリン”(Leopoldo Alas “Clarín”、1852-1901)とペレス・デ・アヤラ(Ramón Pérez de Ayala、1880-1962)の小説の手書き原稿です。
 “クラリン”こと、レオポルド・アラスは、19世紀のスペインを代表する自然主義の小説家で、痛烈な批評家として恐れられたそうです。彼の代表作である、『裁判官婦人(La Regenta)』は、初老の裁判官と、若き既婚女性の不義の恋とその破滅を描いた小説なのだそうです。この図書館が「宝石」として所蔵する、手書き原稿には、作者自身が描いた登場人物のスケッチや、各登場人物の性格設定についてのメモが書かれていて、それらから、まさにこの小説をつくる過程が見て取れるとのことです。また、メモ書きから、タイトルについて、“La Regenta”にするか、“Vetusta”にするか、迷っていたことがわかるそうです。“Vetusta”とは、この小説が繰り広げられる架空の舞台で、実はオビエドのことであるとか。
 もう一人の、ペレス・デ・アヤラは、オビエド出身の作家、随筆家、政治家、大使と、多方面で活躍した知識人です。彼の書いた、『虎のフアン(Tigre Juan)』とその第2章『名誉の汚れを癒すもぐり医者(El cuaderno de su honra)』の手書き原稿にも、登場人物についてのスケッチが描かれているそうです。作品の全ページが完全に残っているわけではないですが、下線や校正が非常に少なく、きれいな原稿であるということです。また、この作品では、まさにこの図書館の前の姿である、カサ・デ・コメディアス(Casa de Comedias)や、すぐ近くにある、フォンタン広場(Plaza de Fontán)の描写がたくさん出てくるそうです。この作品の他にも、彼のその他の作品や、アソリン(Azorín、1874-1967)、アントニオ・マチャード(Antonio Machado、1875-1939)、バジェ・インクラン(Valle-Inclán、1866-1936)、ウナムーノ(Unamuno、1864-1938)など、当時を代表する知識人たちとの往復書簡などが、貴重なコレクションとして保管されているということです。
 以下、図書館と、「図書館の宝石(Joyas de la Bibioteca)」の特集ページです。ご興味があれば、どうぞ!

 最後まで読んでいただいて、有難うございました。

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*1:ホセ・ガルシア・ロペス、『スペイン文学史』、白水社、1992、p.279

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