今日は、気ままに、カタルーニャ州のリェイダ県の県都、リェイダ(Lleida)にある、公共の中央図書館(Biblioteca Pública del Estado en Lleida)にやってきました。リェイダ県の北側は、フランスとの国境に横たわるピレネー山脈に接していて、美しい景観に恵まれています。水資源が豊富で、県内を流れるセグレ川(Río Segre)は、スペイン有数の水力発電の規模を誇ります。良質なオリーブ、ワイン、果物、羊毛、木材を産し、牛の飼育も盛んです。県都リェイダは、バルセロナ(Barcelona)の西約150キロに位置します。その歴史はローマ時代からと古く、町中には聖堂が多いとか。市街を流れる川を堺として、右側が旧市街地、左側が新市街地に分かれているそうです。
さて、このような街にある図書館はどんな図書館なのでしょうか。主な統計値を書きます。
- 【主な統計値(2019年)】
建物内図書館利用エリア:4,690㎡
入館者数:271,687人
登録者数:96,835人
所蔵資料総数:282,007件
貸出総件数:190,882件
(出典:スペイン文化・スポーツ省のページ)
この図書館の創立は1848年。1998年、現在の場所に移りました。その場所にあった建物は、元産科医院で、1988年まで実際に使われていたそうです。1998年にその建物の内装や設備を一新し、図書館に再利用した形です。その後、2013から新しい図書館作り計画が始まり、計画の見直しが繰り返され、2018年に今日の姿になりました。建物は、地下の書庫と地上3階の開架部から成っています。
この図書館のホームページを読んでいて、他の公共の中央図書館にあまり見られなかった特徴として、サービスに「インクルーシブ」の視点を積極的に取り入れていることが挙げられます。この取り組みは、カタルーニャ州全体で行われているそうで、ただ制度や技術的なフレームワークを構築するだけではなく、すべての人が差別されることなく、社会に参加できることを目指しているとのことです。
図書館は、2020年から2022年の間に、この取り組みの考え方に則り、以下4つの点で、「インクルーシブ」化を試みました。
- 建物(Edificio)
- コレクション(Colección)
- 活動とサービス(Actividades y servicios)
- 利用者とのコミュニケーション(Comunicación con el usuario)
1.)建物(Edificio)
- 駐車場内に、福祉改造車の駐車スペースを確保しています。
- 身体の不自由な利用者に便利なように、図書館の正面にバス停を設定しています。また、このバス停に停車するすべてのバスは、バリアフリー対応車とのことです。
- 正面入口への歩道の幅を広く取り、さらに、その歩道の周りを庭園で囲むことにより、車道を走る車との接触を避けるよう工夫しています。
- 正面入口には、車いす用のスロープを設置しています。
- 図書館の正面玄関と受付カウンターのある1階の間に段差があるので、車いす用の昇降機が設定されています。昇降機は手動とのことです。
- エレベータの壁面をガラス張りにして内部が見えるようになっています。
- 各階に車いす専用トイレが2つずつ設置されています。
- 視覚に障害のある利用者は、盲導犬と一緒に入館することができます。
2.)コレクション(Colección)
- ピクトグラム(絵文字)付き図書、読みやすい内容の図書、大文字図書、点字図書、録音図書を用意しています。
- これらの資料を本棚で見つけやすいように、背表紙に「インクルーシブ」のロゴマークが貼られています。
3.)活動とサービス(Actividades y servicios)
- 聴覚に障害を持つ利用者のために、受付カウンターや館内ホールなどに磁気誘導装置を設置することで、ノイズを減らし、聞くべき音を拾いやすくしています。
- できる限り多くの活動で、記号言語を併用します。
- 視覚に障害のある利用者のために、貸出用の大型ルーペ2つと、拡大読書器を用意しています。
4.)利用者とのコミュニケーション(Comunicación con el usuario)
- さまざまな障害を持つ利用者に対して、アクセスしやすく、わかりやすい資料の紹介に努めます。
- さまざまな障害を持つ利用者への接し方ついて、図書館スタッフに対する継続的な教育を行っています。
- さまざまな障害を持つ利用者の利用しやすさを高めるための器具について、その扱い方の教育を行っています。
図書館を利用する際、「インクルーシブ」という見方ではあまり見たことがありませんが、今後、見てみたいと思います。
以下、図書館のホームページです。ご興味があれが、どうぞ!
- 図書館のホームページ
最後まで読んでいただいて、有難うございました。
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